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生成AIの利用実態調査|何を聞けば分かる?社内アンケートの設問例と結果の読み方

社内の生成AI利用を調べる匿名アンケートの設問例を紹介します。回答の扱いを伝える前文、業務と入力内容を聞く8問、承認するツールや利用条件を決めるための集計方法をまとめました。

職員が、AIを使った業務と入力内容を回答する
写真はAI生成のイメージです。

生成AIの利用状況を社内アンケートで調べるなら、回答がどう扱われるかを先に伝えます。無断利用を問われると感じれば、社員は回答をためらいます。利用した業務と入力内容を具体的に聞く設問例と、集計結果の使い方を紹介します。

01調査の前提と使いみち

調査を始める前に、回答の扱いと、結果をもとに決めたいことを整理します。

匿名調査では、個人の処分に回答を使わず、利用条件を検討するために集計する方針を社内で確認します。そのうえで、部署名や個人名を集計しないことと、調査の目的を前文に明記します。

書き方には注意が必要です。過去の利用は一切問わない、と広く約束するのは避けてください。社外に出せない情報が入力されていた場合まで免責することになり、後で別途対応が必要になった場合に、約束との食い違いが生じます。約束できるのは、この調査で集めた回答を個人の処分に結びつけない、という範囲までです。

結果の使い道も絞ります。承認するサービスを選びたいのか、入力してよい情報の範囲を決めたいのかで、必要な設問は変わります。目的を広げすぎると質問が増え、回答の負担も大きくなります。

JIPDECとITRが従業員50名以上の企業983名を対象に2024年1月に実施した調査では、会社で構築・契約した生成AIを使っている企業の68.6%が利用規定を策定していたのに対し、社員が各自で契約・登録した生成AIを使っている企業では9.0%でした。同じ調査で、会社契約が15.9%、個人契約が19.1%です。この調査では、個人契約の生成AIを使う企業で利用規定の整備が進んでいない様子がうかがえます。自社の調査でも、会社契約と個人契約を分けて確認します。

総務省と経済産業省のAI事業者ガイドライン(第1.2版)の別添は、AIガバナンスの出発点を環境・リスク分析に置いています。そこに並ぶ行動目標1-3は、自社のAI習熟度を、AIに関与する従業員の人数と経験の程度、その従業員のAI技術および倫理に関するリテラシーの程度などにもとづいて評価し、適時に再評価するよう求めています。社内調査でも、利用状況と従業員の経験を把握しておくと、対応の優先順位を考える材料になります。

ポイント前文には、調査の目的、匿名で集計すること、回答を処分の材料に使わないことを明記します。情報漏洩が疑われる場合の報告先は、別に案内します。

ただし、そのガイドラインも、設問の文言までは書いていません。社内アンケートの聞き方を定めた公的な基準は、調べた範囲では見当たりませんでした。以下は、業務内容と入力情報を把握するための設問案です。

02設問の組み立て

匿名の入力フォームで、5分以内に終わる分量に収めます。下は8問の例です。自社の業務に合わせて調整し、Q3の作業内容とQ6の入力情報は確認できるようにします。

  1. あなたの主な業務に近いものを選んでください(営業/人事・総務/経理/技術・開発/カスタマーサポート/その他)
  2. この1か月で、AIに文章を書かせたり要約させたりした業務はありましたか(あった/なかった/わからない)
  3. あった場合、具体的にどんな作業でしたか。1行で書いてください(自由記述)
  4. そのとき使ったサービス名を、覚えている範囲で書いてください(自由記述・複数可)
  5. それは会社が契約したアカウントでしたか(会社のアカウント/自分で登録したアカウント/どちらかわからない)
  6. 入力した内容に、社外に出せない情報は含まれていましたか(含まれていた/含まれていない/判断に迷う)
  7. 使うのをやめた、または迷ってやめた場面があれば書いてください(自由記述)
  8. AIの利用について、誰に聞けばよいか知っていますか(知っている/知らない)

Q3の作業内容は、承認するツールを選ぶために使います。議事録の清書と英文メールの下訳では、必要な機能も入力情報の機密性も違います。サービス名だけ集めても、何を承認すべきかは決まりません。

Q7では、社員が利用をためらった理由を確認します。顧客名を含む資料だった、社内規程について相談しようとしたが入力してよいか分からなかった、といった回答があれば、その業務の利用条件を検討します。

ポイントQ6で判断に迷うという回答があれば、どの情報について迷ったのかを確認します。割合だけで判断せず、入力内容の機密性や既存ルールとの関係を調べます。

院内AI利用の業務、環境、入力情報と判断に迷った場面を聞く設問例
病院での業務例:院内AI利用の業務、環境、入力情報と判断に迷った場面を聞く設問例図を拡大して見る ↗

03配る相手と時期

全社員に配るのが理想ですが、回収と集計の手間を考えると、最初は部署ごとに絞っても傾向はつかめます。優先するのは、顧客情報や人事情報を日常的に扱う部署です。営業、人事、経理、カスタマーサポートなど、自社で該当する部署から始めます。

配布は期末や繁忙期を避け、回答期間は1週間程度を目安にします。締め切り前に一度案内し、回答が少なければ、対象者の忙しさや質問の分かりにくさを確認します。

依頼元は、情報システム部門と総務や人事で相談して決めます。社員が監査や違反調査と受け取らないよう、依頼文でも目的を説明します。

04集計の読み方

集めた回答は、次の4パターンに分けて、確認事項と対応を整理します。

回答のパターン読み取れること次にやること
Q2があったで、Q5が自分で登録したアカウント個人アカウントの利用がある。承認状況は別途確認する承認するサービスを1つ決めて、会社契約への移行を検討する
Q6で判断に迷うが多い利用条件が曖昧か、説明が伝わっていない可能性がある入力してよい情報の区分を先に決める
Q8で知らないが多い相談経路が存在していないか、伝わっていない相談先を1か所決めて周知する
Q2がなかったばかりで自由記述も空使われていないか、答えにくい設計になっている回答の扱いが伝わっているか確認する

1つ目のパターンが出たときの進め方は、シャドーAIの対策|禁止だけで終わらせない、承認ツールの選び方と申請窓口の作り方にまとめました。

未利用の回答が多い場合も、すぐに聞き方の失敗とは判断しません。総務省の令和7年版情報通信白書では、個人の生成AI利用率は2024年度調査で26.7%、20代では44.7%でした。ただし、この数字は自社の業務利用率を表すものではありません。回答の負担や匿名性の伝わり方を確認し、必要に応じて聞き取りを補います。

集計後は、回答に挙がった業務ごとに利用条件を決める担当者が必要です。商工中金が2025年12月から2026年1月にかけて取引先の中小企業3,892社から回答を得た調査では、生成AIの導入・推進で挙がった課題の上位に、導入を推進する人材がいない(32.0%)、従業員の知識不足や心理的抵抗(29.2%)、社内ルールや方針整備が追い付かない(25.1%)が並びました。支援先や相談相手を確保できないという回答も11.5%あります。

自由記述を規程に反映するには、業務ごとの情報の扱いを調べ、承認するツールや入力条件を検討します。集計作業とは別に、関係部門との調整が必要になります。

05回答が集まらない聞き方

次のような設問は、調査の目的に合うか見直します。

避けたい設問回答が集まらない理由
会社が許可していないAIサービスを使ったことがありますか違反の申告を求める形になっています。回答をためらう可能性があります
生成AIを業務で使っていますか調査の目的が伝わっていないと、回答をためらう可能性があります。Q2のように期間と業務を具体的にして聞きます
今後、生成AIを活用したい業務は何ですか今後の要望を聞く質問なので、現在の利用状況とは分けて集計します
部署名と氏名の記入欄を置く匿名と書いてあっても、回答者はこの欄を見て判断します

集計後は、回答件数と、結果をもとに会社が決めたことを共有します。回答が何に役立ったかを伝えることは、次回の協力を得るうえでも大切です。

06まとめ

匿名アンケートでは回答の扱いを明記し、期間を区切って業務内容と入力情報を聞きます。集計では、利用した作業、判断に迷った情報、利用をやめた理由を確認し、承認するツールやルールの検討に使います。シャドーAIの全体像はシャドーAIの基本|禁止した社内でも起きる?発生する経路と利用実態の調べ方で整理しています。

07よくある質問

Q. ログ調査で代用できませんか

ログが保存されていれば、会社のPCやネットワークからの接続を確認できます。ただし、接続先が分かっても入力内容までは分からない場合があります。私物端末での利用など、ログで把握できない部分はアンケートや聞き取りで補います。

Q. 集計の結果、危ない使い方が具体的に出てきたらどうしますか

匿名調査の方針に沿って回答を集計し、該当する業務の利用条件を見直します。情報漏洩の疑いがある場合は、専用の報告窓口を案内し、事故対応の担当者につなぎます。

たとえば、顧客名の入った議事録をAIに要約させていたという回答があれば、契約条件と情報の内容を確認します。公開できない情報を除いたうえで認めるか、その資料の入力を禁止するかを検討し、決めた条件を早見表に記載します。名前を伏せるだけで十分かどうかも確認が必要です。

業務ごとに情報を分類し、利用条件を決めるには、現場への確認と契約内容の検討が必要です。社内で担当者や時間を確保できない場合は、この工程を外部に依頼する方法があります。GENSHI AIのAIガイドライン作成代行は、利用実態をヒアリングし、経営向けの要約と現場向けの早見表まで含めて、最短3週間で仕上げています。

出典:総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)別添(付属資料)」令和8年3月31日 https://www.soumu.go.jp/main_content/001064286.pdf / 株式会社商工組合中央金庫「中小企業の生成AIの利用にかかる調査(2026年1月調査)」2026年3月31日公表 (調査期間2025年12月19日〜2026年1月16日、有効回答3,892社)https://www.shokochukin.co.jp/report/data/assets/pdf/futai202603.pdf / 一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)・株式会社アイ・ティ・アール「企業IT利活用動向調査2024」2024年3月15日公表(調査時期2024年1月19日〜23日、従業員50名以上の国内企業983名)https://www.jipdec.or.jp/news/pressrelease/20240315.html / 総務省「令和7年版 情報通信白書」個人におけるAI利用の現状 https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r07/html/nd112210.html

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