生成AIのガイドラインを配布した後は、社員が自分の業務に当てはめて判断できるかを確認します。使ってよいサービスや入力できる情報をすぐに調べられる早見表と、迷ったときの相談先を用意します。
01配布と周知の違い
株式会社ISOプロが2026年8月に公表した調査では、企業の経営者や情報システム部門の1,023人のうち約70%が、未許可のAIの業務利用を把握・管理できると答えました。一方で、把握・管理できており大きな問題はないと答えたのは25.3%です。把握できるという回答でも、問題がないとは限りません。自社でも、ルールを整えた後の利用状況を確認する必要があります。
ガイドラインをメールで配布しただけでは、社員が内容を理解したかまでは分かりません。業務中に確認しやすいよう、使えるサービスと情報の入力条件を早見表にまとめ、詳しい説明が必要なときは本文を参照できるようにします。
02A4一枚に載せる項目
本文とは別に、現場向けの早見表を1枚作ってください。基本となる項目は次の5つです。
- 業務で使ってよいサービスの名前と、どのアカウントで使うのかを書く。会社が契約したアカウントに限るなら、そう書きます。会社契約が間に合わず個人アカウントを暫定的に認めているなら、その期限まで書いてください
- 入力してよい情報を、自社の業務に出てくる資料名で示す
- 入力してはいけない情報を、具体的な資料名で示す
- 迷ったときの相談先を書く。担当者の名前でも、窓口のアドレスでも構いません
- AIが書いた文章は、内容を確認してから社外に出すと明記する
入力情報の例には、見積書の金額、顧客名の入った議事録、採用候補者の履歴書など、自社で扱う資料を使います。機密情報という区分だけでは判断しにくい場合も、具体例があれば確認できます。
責任者の役割、違反時の対応、関連法令の詳しい説明は、本文にまとめます。早見表から参照先を案内し、日常の確認に必要な項目を読みやすく配置します。
ポイント早見表は、社員が手元の資料を入力してよいか、迷ったらどこに聞くかを確認するために使います。実際の業務の例を使って、必要な項目を探せるか確かめます。

03説明会の組み立て
説明会は30分程度を目安に、次の内容を扱います。質問が多ければ、部署別の説明や追加の質疑の時間を設けます。
- なぜルールを作ったのか。情報を適切に扱いながら業務で使うためだと伝える
- 早見表の5項目を、自社の業務の例に置き換えて説明する
- 判断に迷う具体例を取り上げ、判断の理由も説明する
- 相談先はどこか。あわせて、相談した人を責めないという方針も伝える
具体例の説明と質疑に時間を取ります。例は利用実態調査で集まった回答から、個人や機密情報が特定されない形で選びます。社員が実際に迷った作業を取り上げると、早見表の使い方も説明しやすくなります。
欠席者には録画や資料を案内します。部署の朝会などで早見表を確認する時間を設けると、録画を見る時間が取りにくい社員にも説明できます。
04相談窓口と申請窓口
相談と利用申請では、受け付ける内容が違います。同じ担当者が対応する場合でも、相談用の連絡先と申請フォームを分けて案内すると、社員が目的に合わせて連絡できます。
| 申請窓口 | 相談窓口 | |
|---|---|---|
| 受けるもの | 承認されていないツールを使いたいという要望 | この使い方をしてよいかという判断の迷い |
| 返答の期限 | 初回返答は3営業日程度を目安に設定 | 当日〜翌営業日を目安に設定 |
| 記録 | 審査の記録として残す | 個人名を紐づけずに、内容だけを蓄積する |
| 相談者の立場 | 申請者として名乗る | 名乗らなくても答える |
匿名でも相談できる方法を用意し、回答に必要な範囲で情報を集めます。相談内容の共有先と記録の扱いを説明しておくことも大切です。よくある質問は個人が特定されない形で整理し、早見表の改訂に使います。
総務省と経済産業省のAI事業者ガイドライン(第1.2版)の別添は、重大なヒヤリ・ハットの発生を会社が知るための工夫として、従業員が報告しやすくする仕組みの整備を挙げ、その例に匿名報告システムの導入を書いています。相談窓口は、事故が起きる前のヒヤリ・ハットを受け取る場所でもあります。
ツールの申請窓口の作り方は、シャドーAIの対策|禁止だけで終わらせない、承認ツールの選び方と申請窓口の作り方にまとめました。
05周知後の確認
周知から1か月程度を目安に、社員がルールを理解し、相談先を把握しているかを確認します。次の項目を使うと、追加の説明が必要な点を探せます。
- 相談窓口に何件届いたか。少ない場合は、相談の必要がなかったのか、窓口が知られていないのかを確認します
- 早見表に載っているサービス名を、社員が言えるかどうか。朝会や短いアンケートで確認します
- どんな申請が上がってきているか。早見表で答えが出るはずの質問が申請として来ているなら、早見表の書き方と、相談先の案内を見直します
相談件数だけでは周知の成否を判断できません。件数が少なければ、利用状況や窓口の認知度も確認します。社員が連絡をためらっていないか、部署ごとに聞いてみる方法もあります。
06まとめ
ガイドライン本文に加えて、サービス名、入力条件、出力の確認方法、相談先をまとめた早見表を用意します。説明会では自社の業務の例を取り上げ、相談と申請の方法を案内します。周知後も利用状況や質問内容を確認し、説明が足りない箇所を見直します。
07よくある質問
Q. 説明会に人が集まりません
部署ごとの定例会議で15分程度の説明時間を設ける方法があります。その部署の業務に沿った例を使い、疑問を聞きます。全社向けの録画や資料も用意し、参加できなかった社員に案内します。
Q. 相談窓口の担当者に、判断できる人がいません
その場で答えられる範囲と、持ち帰る範囲を先に決めておいてください。早見表に書いてある内容ならその場で答える、個人情報や取引先の資料が関わるものは法務に上げる。この2段階にすれば、担当者は一次受けに徹することができます。
Q. 早見表は何か月ごとに更新しますか
定期的な見直しに加え、同じ質問が繰り返されたときや、利用条件が変わったときに更新します。早見表には更新日を記載し、古い版と区別できるようにします。
本文、経営向けの要約、現場向けの早見表、説明会の資料を揃えるには、各資料の内容を整合させる作業も必要です。社内で制作や説明の時間を確保しにくい場合、GENSHI AIのAIガイドライン作成代行では、これらの作成とオンラインの社内説明会をまとめて依頼できます。納品後の更新にも対応しています。
